中山 侑紀
なかやま ゆき
1996年生まれ 伊那市在住
動く、動く、針を持つ手が。響く、響く、侑紀さんの声が。 今日は何色の布で、何を作ろうかな。こんな女の子になりたいな。髪もいろんな色がいいな。大きな靴を履いちゃおうかな。言葉を超えた自己表現が、カラフルな人形となって伝わっています。裁縫に馴染んで育った侑紀さんは、イメージ溢れる人形だけでなくフェルトアップリケも得意。材料さえ整えば、それはそれは手さばきの速いことといったら。サポートする職員が追いつかない程に毎日たくさんの作品が誕生します。いつの間にか、洗濯して干してあった他利用者さんや職員が使うエプロンや軍手にカラフルなアップリケが縫い付けられて。「やだぁ、いつの間にぃ」と、笑い合う瞬間もかけがえのない時間。「えへへ、みつかったー」といたずら心が見え隠れする笑顔をとても愛おしく感じます。 手芸店へ連れて行ってくれるご家族の後押しを得て、感性豊かな侑紀さんの心は今日もわくわくと動きます。先へ先へと物事を捉えまるで風のような侑紀さんが、縫製を通じて自分の存在を表す世界観を、どうぞお楽しみください。 今日もたくさんの好きなものに囲まれて過ごしてね。だって大好きだから。
中山さんの作るお人形には、たぶん、綿じゃなくって、夢がぎゅうぎゅうに詰まってる。たくさんの人形の山、1つ1つ手に取ると、そんな想いが込み上げた。 運動会や学芸会の日のお弁当みたいに、ちょっとだけ、いつもと違うことのワクワク。西洋の絵本の中から飛び出してきたような、キャラクターデザイン。 人形というアイテムは、愛らしさと同時に、実は狂気も持ち合わせている。でも、そういう負の要素が一切なくて、底抜けに明るい。音楽なんかも流れてきそうで、この沢山の人形で劇なんかやったりして、職員さんたち、劇団作らないかな、なんて次から次へと、楽しい妄想が湧き起こる。そうゆう気持ちにさせてくれること自体が、作品に大きな魅力があることの証。ペラペラの布切れが、形あるモノに変わっていくこと自体の面白さもある。絵だとこうはならない。 こんな時、絵を描いているボクとしては、嫉妬する。羨ましい。彼女の、ものすごい速さで縫っていくその手際の良さは完璧に職人技で、改めて、モノ作りは、想いだけでは出来ないものだよな、と再認識した。想いを形にするのは、技、なのだ。( 森泉 智哉)