eri
えり
1993 年生まれ 長野県内在住
最初に手に持った時の拍子抜けするほどのかるさ。持った時の手にすっと馴染む 納まりの良さ。僕には有機的な(まるで感情のような 生命のような)ものに見えた。
体調を崩してからeriさんの刺繍は、平面からこの球体へと移行していったという。職員がまず 麻袋のような素材に糸くずを詰め込み、手のひらに収まる大きさのボールを作る。そこへ一針一針糸を刺していく。とても愛おしそうな表情で大切な宝物を優しく育てているかのようだ。球体は少しまわせば、見え方も変わる。糸が重なるたびに、手に触れる感触も変化していく。変化していく事に答えるように、選ぶ糸も刺し方も変わっていくかもしれない。手の中で少しづつ回りながら変化していくそれは、(どこからはじまり、またどこが終わりなのか)という事のその先に転がっていくように思えた。それは やはり(感情のような、生命なような)ものに近い気がする。 最近の変化として、一度刺した糸をハサミで切ってモケモケの髪の毛のようにすることがあるようだ。内へ内へと向かう針の先きに思いをのせながら、この球体 はまだまだ変化していきそうだ。
「無題」 制作年不詳