前田 啓子

まえだ  けいこ

 

1989 年生まれ 飯田市在住

 

「私が描く絵でみんなを元気にしたい!」そんな思いで絵を描き、頑張りすぎて体調を崩すこともある前田さん。彼女が暮らす施設の自室の壁一面に作品が飾られていた時期もあったが、心境の変化で今は外されているそうだ。彼女の描くかわいらしいキャラクターは彼女自身なのか、その時々の心境により色や雰囲気が変化している。

 

 

「ともだちになろうよ!」
油性マーカー、木製パネル

 

 

2019年図録より

 

自分の思いを伝えることが難しかった影響で身体が動いてしまい、自室のものを投げる、叩くなどが頻繁だった前田さん。数年前から絵を描くことを始め、力を向ける方向が作品になった。描いた絵がポップで可愛いため、「私が描いた絵で皆を元気にしたい」と思う様になり、テレビ番組で自分の作品を取り上げてくれないかとオファーを出すまでに至る。しかしあまりにも根詰めて描きすぎるため不調になることも多く、あらかじめ一日に描くエリアを支援者が決める様になった。各作品に区切られたマス目が見えるのはそのためで、基本的に一日ひとマスずつ描き進めたそうだ。自分の絵で人を元気にしたいと制作にのめり込むことで自分自身を壊してしまうかもしれないその姿には考えさせられるものがある。

自室の壁に描かれた作品では幾つかの異なる表現に気づくことができる。マス目によって色や表現方法が異なるのだ。これは感情や体調がダイレクトに表現につながっていて、ポップなキャラクター等を描いている時は元気な状態、抽象的な模様を描いている時は不調気味、青い部分はとても気持ちが落ち着いた時期だったそうだ。作者のデリケートな内面性が顕著に表れている。

実は作者が自室の壁に描き始めた時、支援者たちは予期せぬ事態に驚いたそうだ。しかし制作を止めさせることはせず、暖かく見守る体制があった。それは作者の大きな支えになっているのは間違いないだろう。(小川)

 

 

 

「無題」2019

 

 

 

 

「ともだちんいなろうよ」2019

 

主催  長野県 | ザワメキサポートセンター
共催  長野県教育委員会 | 信州アーツカウンシル(一般財団法人長野県文化振興事業団)
障害者芸術・文化祭のサテライト事業
長野県県民芸術祭2023 参加

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