森川 慶椰

もりかわ けいや

 

2003 年生まれ 松本市在住

 

森川さんは難聴と弱視があり、養護学校の寄宿舎で生活している。彼が子供の頃、お母さんがコミュニケーションの手段として紙とペンを渡したことが、絵を描くようになったきっかけだ。彼は、今ではジェスチャーでコミュニケーションがとれるようになったので、絵は自分の気持ちを整理するために描いているようだ。彼の点描画のような作品は、身近な人を色で表したり、その日あったことを思い出しながら描いたりする、絵日記のようなものでもある。

 

 

「無題」
油性マーカー、ボールペン、紙

 

 

2019年図録より

 

箱から一斉に何かが飛び出したような点描。画面の上で渦巻く線。色鮮やかに動きのある描写が青年らしい快活さを感じさせる。風景を印象的に表しているのかとも思ったが、聞けば、色は彼の周りの人を表しているそうだ。青が上のお兄さんで、緑は下のお兄さん。赤がお母さんで、紫はお父さん。そしてピンクは大好きな学校の友人…と、その人によって色が決められ、一緒に過ごしたり、遊んだりしたその日の出来事が描かれている。
弱視と難聴があり、幼少期、まだ手話やマカトンが使えなかった時に、絵を描いて意を伝えることが母とのコミュニケーション手段だった。思いが伝わらず困っていた時に、母がマジックと紙を「書いてごらん」と渡したことがきったけだったそうだ。学齢期になり自分の気持ちを身振り手振りで伝えられるようになってからは、絵は自分のものとして、家や寄宿舎で、毎日数時間没頭して描いている。低学年の頃は鉛筆で描きモノトーンが中心だったが、眼鏡をかけてから様々な色を使うようになった。ドラえもんとアンパンマンが好きで、絵の中に登場する顔は、そのキャラクターか。明るくてシャイな青年の絵日記のような作品。思春期らしい躍動や葛藤や秘めた思いが、様々な点や線になって紙の上で弾けている。(鈴木真)

 

 

「無題」2019

 

主催  長野県 | ザワメキサポートセンター
共催  長野県教育委員会 | 信州アーツカウンシル(一般財団法人長野県文化振興事業団)
障害者芸術・文化祭のサテライト事業
長野県県民芸術祭2023 参加

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