中沢 久美子

なかざわ くみこ

 

1973 年生まれ 長野市在住

 

 

600マスの国語のノートが1から600の数字で埋め尽くされている。そしてボールペンの強い筆圧で書かれているため、ノートはゴワゴワしていて、何か切迫感さえ感じる。作者は自宅近くの作業所に通い、とてもきっちりと作業をこなし、元気に明るく振る舞い、作業所の朝会、終わりの会を仕切るほどリーダー的な存在だ。しかし、まずはノート1ページに数字を書き込まないと次の行動には移れない。休憩時間もひたすらノートに書いている。こんな行為は十数年続いている。さぞかし大量のノートがあるのかと思っていたが、残念ながら、ノートは書き終わる端から処分され、このノート1冊が残っているだけである。

なぜ数字を書いているのかという問いには答えてもらえなかったが、作者はやっとたどたどしく『オカアサンベンキョウシテイル』と小さくつぶやいた。こんなにも頑張っている自分をもっと認めてほしい、という願いがこのノートには込められているのかもしれない。きっと今日も新しいノートに数字を書き込んでいるのだろう。

 

 

 

「無題」2017