中沢 久美子

なかざわ くみこ

 

1973 年生まれ 長野市在住

 

600 マスのノートのマス目のひとつひとつに、1 から600 までの数字が書かれている。ノートのどのページを見ても、強い筆圧のボールペンの数字で埋め尽くされている。中沢さんはこの行為を何年間も続けている。

 

 

「無題」

ボールペン、ノート

 

 

2017年図録より

 

600マスの国語のノートが1から600の数字で埋め尽くされている。そしてボールペンの強い筆圧で書かれているため、ノートはゴワゴワしていて、何か切迫感さえ感じる。作者は自宅近くの作業所に通い、とてもきっちりと作業をこなし、元気に明るく振る舞い、作業所の朝会、終わりの会を仕切るほどリーダー的な存在だ。しかし、まずはノート1ページに数字を書き込まないと次の行動には移れない。休憩時間もひたすらノートに書いている。こんな行為は十数年続いている。さぞかし大量のノートがあるのかと思っていたが、残念ながら、ノートは書き終わる端から処分され、このノート1冊が残っているだけである。

なぜ数字を書いているのかという問いには答えてもらえなかったが、作者はやっとたどたどしく『オカアサンベンキョウシテイル』と小さくつぶやいた。こんなにも頑張っている自分をもっと認めてほしい、という願いがこのノートには込められているのかもしれない。きっと今日も新しいノートに数字を書き込んでいるのだろう。

 

 

 

「無題」2017

主催  長野県 | ザワメキサポートセンター
共催  長野県教育委員会 | 信州アーツカウンシル(一般財団法人長野県文化振興事業団)
障害者芸術・文化祭のサテライト事業
長野県県民芸術祭2023 参加

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