竹内 一貴
たけうち かずき
1986年生まれ 伊那市在住
Story
私が支援員として竹内さんと出会ったのは5年前。クレヨンを渡すとすぐにグルグルと手が動き始め、その活動時間中に止まることはありませんでした。まるで自らの存在を作品に刻み込んでいるかのような圧巻の制作風景は今でも鮮明に覚えています。そしてその制作スタイルと作品に向かう熱量は現在も変わりはなく、日々制作に取り組んでいます。以前と異なるのは昨年から画用紙からキャンバスに描くようになったことでしょうか。画用紙に描いていた時はかなりの頻度でボロボロになり破けることが多く、本人もやり辛そうでした。丈夫なキャンバスに変えたことで、クレヨンや絵具を重ねた後にニードルで削るという今の表現に集中できるようになった様です。
zawameki artiens
漆黒の背景の上に描かれたさまざまな彩色。竹内さんの絵を見て私は、ラスコー洞窟の闇の中に描かれた旧石器時代壁画のことを連想しました。フランスにいたサピエンスたちは、一寸の光も届かない闇の中に壁画を残したのです。描かずにはいられない、竹内さんの手はクレヨンを持つと止まることなく、色を塗り重ねるのだそうです。竹内さんを制作へと突き動かす衝動とは何か。それは、このアート展に展示された作品のひとつひとつに問いかけたい根源的な理由でもあります。ちなみに人類が握った最古のクレヨン(顔料石)が、南アフリカのブロンボス洞窟から発掘されています。ただ残念なことに、7 万5000 年前とされるそのクレヨンで描かれた作品そのものは見つかっていません。( 堤 隆)