宮﨑 義治
みやざき よしはる
1969年生まれ 北佐久郡立科町在住
Story
宮﨑義治さんがたてしなホームに来られた当初は、あまり落ち着かない様子で、掲示物の紙をやぶいたりしていました。しかし、よくよく考えてみると、宮﨑さんは「紙をちぎることが上手なんだ」と逆に気付かされたのです。新聞・広告・段ボール、何でもちぎるのが上手です。思えば、その気付きが、これらの作品群を生み出すきっかけとなりました。せっかくうまくちぎれたのに、その紙をそのまま捨ててしまうのはもったいない。そして、紙きれをボンドで段ボールに貼ったり、その上から絵具で色を塗ってみたり、また剥がしたりと、自由に制作していただくことになりました。掲示物などをやぶく行為が、今では「宮﨑さんの作品ってすごいね」と、高く評価される理由になったのです。宮﨑さんは今も、制作活動をコツコツと続けています。作業の終わりに飲む缶コーヒーが至福の時間をもたらします。
zawameki artiens
平板なデジタルアートでは表現し得ない微細な“ちぎり” や“めくれ” による陰影、あるいは手打ちの無数のドット、これらが宮﨑作品の命脈を保っています。ひとつひとつのポイントを落とすのにいったいどれだけの時間が費やされているのでしょう。たとえば3D プリンタをもってしても、極薄の紙のしなやかさまでを表すのは困難だと思います。作品にはさまざまな色彩が散りばめながらも、ピンクなどの色の主張がよりいっそう鮮やかです。人類学者レヴィ = ストロースが近代合理主義の対岸に見たのは、始原あふれる先住民社会での「野生の思考」であり、画一化に反し、さまざまな要素をコラージュする“ブリコラージュ” の手法です。ポップな宮﨑作品ですが、同様に合理性とは相反する文脈が見てとれます。( 堤 隆)