笠原 正人
かさはら まさと
1976 年生まれ 上田市在住
Story
赤、青、黄色の3原色、そして白があればさまざまな色が作り出せます。自分だけの色の配合に喜びもわいてきます。笠原さんの作品にもそうした独自な色の配合があるようです。彼は描きはじめると、ぐるぐると腕を回してまず線を描き出します。そしてさまざまな色を重ねます。出来上がった作品には、いつも人の目や心を奪うような大胆な色使いと線が描かれています。控えめな彼からは想像もつきません。それは「書」でも同じです。ぽけっとでは、ビルや割烹の掃除、配達の仕事を黙々とこなしている笠原さんですが、時には縁側に座って背中丸め、好々爺のような姿で周りの人々の動きと声を耳にし、楽しんでいます。新聞紙を細かく切って貼っていく本作品も、そんななかで根気よく仕上げられたものです。
zawameki artiens
たくさんの細片の集合体がレイヤーをなしています。よくみるとその一片一片はニュースペーパーなどをちぎったものです。“ぽけっと” で見た笠原さんの作品は、活字の黒や商業広告、天気予報などのさまざまなカラーが、ちぎられて、貼り付けられ、融合して、微妙な色合いをみせています。ちぎり絵は、私たちになじみ深いものとして山下清さんの作品などがありますが、たとえば代表作のひとつ“長岡の花火“などが写実的なのに対し、笠原さんの作品は抽象的、細胞が濃縮されたかのようにも見えます。きっとたくさんの時間を費やして、ひとつひとつの細胞を生体へと織りなしていく 、そんな作業をしているのだと思います。( 堤 隆)