前沢 祐幸

まえざわ ひろゆき

 

1971 年生まれ 伊那市在住

 

自閉症特有の強いこだわりを持つ前沢さん。目につく物をきちんと並べ替えてしまうほどの厳格なルールを持っている。描く絵も、色こそ変えているものの、構図もサイズも同じである。描かれているモチーフの人物は一見ユーモラスだが、その目にじっと見つめられているようで、観る者に緊張感を与えている。

 

 

「無題」

油性マーカー、紙

 

 

2018年図録より

 

前沢さんは生活するグループホームから駒ヶ根市内の福祉施設に通い、毎日、表現活動に取り組んでいる。自閉症の特性から強いこだわりを持ち、グループホームの自室に並ぶシャンプー、リンス等は、その置く順番はもちろん、そのラベルを必ず正面に向けている。そして時には他の利用者の私物、さらには店舗に並ぶ商品も直すほどの徹底ぶりだ。
そんな前沢さんは、その几帳面さと器用さを活かし、福祉施設ではクロスステッチの刺繍をするほか、表現活動として今回出展したキャラクターの作品を手掛けている。
この作品の魅力は、そのデザインや色、反復性、再現性だけでなく、前沢さんならではのこだわりや刺繍のような細かい計算、あるいは下書き等を全くせず、いきなりクレヨンやマジックを紙の上に一気に走らせて描き進めている点が挙げられるだろう。
前沢さんの几帳面さと相反する自由で牧歌的な作品の数々、そしてその表現活動は、いつもの「こだわりの世界」から自身を解き放つ一つの手段なのかもしれない。
絵を描き始めると「ニヤニヤ」と笑い始める姿が、この行為が決して単なるルーチンではないことを証明している。(中村)

 

 

「無題」2018

主催  長野県 | ザワメキサポートセンター
共催  長野県教育委員会 | 信州アーツカウンシル(一般財団法人長野県文化振興事業団)
障害者芸術・文化祭のサテライト事業
長野県県民芸術祭2023 参加

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