岡村 堅治

おかむら けんじ

 

1945 年生まれ 南佐久郡小海町在住

 

岡村さんは50 代で全盲となった。絶望の中、唯一無心になれるのは、子供の頃に母から教わった折り鶴を作ることだった。指先の感覚だけで、新聞広告を約2㎝四方にカットし鶴を折っていく。鶴を折ることだけに集中すると心がやすらぎ、気が付くと寝食も忘れて折ることもしばしばだそうだ。

 

 

「小さな鶴と共に」

折り鶴(新聞広告)

 

 

2017年図録より

 

岡村さんは43 歳で網膜色素変性症により視覚障害になり、50 代で全盲になった。その頃、絶望の中で唯一無心になれるのは、子供の頃に母から教わった折り鶴を作ることだった。新聞の広告紙を、物差しを使い指先だけで約2cm 四方にカットし、手先の感覚だけで鶴を折る。素早く正確に折っていき、最後にくちばしの部分は爪楊枝を用いてシャープに仕上げる様子は職人のようだ。無心で鶴を折っていると心が安らぐと言い、日中から折り始めて気が付くと夜が明けていることもしばしばだ。時間を忘れて没頭し過ぎ体調を崩すおそれがあるため、現在では医師から制作時間の制限をされている。二人暮らしだった母を亡くした後、岡村さんが外出するきっかけになればと、担当のケアマネージャーがその小さな鶴を様々な場所で紹介したことから、地域の人たちとの交流が生まれるようになった。今では、地元の小学校を訪問した際、目が見えないことに関して質問に答えたり、岡村さんの実演を見て目をつぶって鶴を折る体験をしたりしてもらうなど、子供たちが障がいを理解するための教材になっている。以前は幻覚に悩まされることもあったが、折り鶴を通じて地域の人たちとの交流が生まれるようになった頃から、その影響かどうかはわからないが落ち着いてきているという。岡村さんにとっての折り鶴は生きることを確認する手段であり、母への思いである。

 

 

「小さな鶴と共に」 制作年不詳

主催  長野県 | ザワメキサポートセンター
共催  長野県教育委員会 | 信州アーツカウンシル(一般財団法人長野県文化振興事業団)
障害者芸術・文化祭のサテライト事業
長野県県民芸術祭2023 参加

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