湯本 久子
ゆもと ひさこ
1965年生まれ 長野市在住
Story
湯本さんが絵を描こうと思ったのは、奥津国道、野村重存の画集や植物画に出会ったことがきっかけだそうです。それまで美術への関心がなかったとは、今の湯本さんからは想像できません。当初の作品は植物や生活雑器が多かったのですが、いつからかペットが登場。今は亡き犬の“もも”、元気なインコの“青ピッピと黄ピッピ”、 アンデスの歌うネズミ“デグーマウス”、そして金魚の“隆ちゃん”、「金魚はなんとも不自由な生き物。何も言わないし気にしてあげないと生きられない。きれいな姿で泳ぐ姿に癒され、その姿を描きたいと水彩画や鉛筆で描いている。15 年くらい飼っていて今4匹。ペットは私にとって1 番心が許せる存在です。」ポプラの会で制作活動を始めてから10 数年。湯本さんの作品は変化し続け、描き始めたころの表現はもうありません。でもなぜか新作を見るたびに、初めのころ描いた2枚の青い絵が浮かんできます。それらは、湯本さんの持つ根源的なものの証だからでしょうか。変わるものと変わらないものをたずさえて、次はどんな作品になっていくのか楽しみです。
zawameki artiens
月の詩(うた)と題する湯本さんの作品(左頁)は、曲線と球体から構成されます。あえて太陽でなく月からは、実際、どのような詩が奏でられるのでしょう。インタビューに答えてくれた湯本さんは、球体はよく描くといい、「自分の中の宇宙」を表現しているのだとおっしゃっていました。本来、生き物などの具象画から絵の世界に飛び込んだという湯本さん、絵を描くことで心に落ちつきが持てたといいます。さらに抽象の世界を描くようになった心の変化とは、いったいどこにあるのでしょうか。湯本さんの絵を見たとき、現代アートを牽引した池田龍雄さんの作品群を思い出し、オマージュにも似た感覚が不思儀に呼び起こされました。( 堤 隆)