小松 康成
こまつ やすなり
1977 年生まれ 駒ヶ根市在住
小松さんは、ある日支援者が手渡したペンで紙に線を描き始めた。それまで特に何もせず、福祉施設で自由に過ごしていたが、線を描くという表現が彼の生活の一部となっていった。その線は様々な色のペンや絵の具を使って独特のタッチで描かれ、描くタイミングも自由気ままに続けられている。
「無題」
油性マーカー、水彩絵の具、紙
県内最大規模の福祉施設を利用する小松さん。とても人懐こく、この福祉施設に訪れたことのある方の多くは、玄関先で来訪者を待ち受ける小松さんの姿を目にしたことだろう。ただ小松さんは、これまでこの福祉施設のどの活動にもはまらず、そして何をするでもなく、施設の周りを散歩したり、様々な活動の部屋を覗いたりと、わりと自由奔放に暮らしてきた。 そんな小松さんの暮らしが一変したのが2017 年の冬。何か落ち着かない様子を感じ取った支援者が紙とペンを渡したところ、これが「バチッ」とはまった。この時、小松さんが描いたのが「線」。独特のタッチで描かれる線は、手の震えも相まって何とも言えないオリジナリティーを持ち、この線を支援者が褒めたことも、本人の自信ややりがいにつながったようだ。そして今では線を描く表現活動が暮らしの一部となっている。さらに今では、この表現活動に留まらず、これまで参加していなかった音楽や運動の活動にも顔を出し始めているとのこと。施設長も「絵を描き始めたことで生活のリズムが生まれた」と話す。偶然生まれたこの表現活動がいつまで続くのか、どう変わっていくのかは分からないが、今現在、小松さんは自由奔放に線を描き続けている。(中村)
「無題」2018