上條 太瑚
かみじょう だいご
1995 年生まれ 北佐久郡立科町在住
月に一回ある福祉施設でのアート活動に、上條さんはある日突然参加するようになった。支援者からコバルトブルーの絵の具を含ませた筆を渡されると、彼は一気に筆を紙の上に走らせた。彼はそれ以降、コバルトブルーしか使わない。その色へのこだわりは、言葉でコミュニケーションができない彼の主張のように感じられる。
「無題」
アクリル絵の具、紙( 左) / アクリル絵の具、キャンバス( 右)
上條さんは、すべてをコバルトブルーに塗りつぶしていく。生活している障がい者支援施設でのアート活動の会に参加するようになった当初、上條さんが唯一興味を示した色がコバルトブルーだった。ご家族の話によると、子供の頃に母親が絵を描かせた時も特定の色にこだわっていたそうだ。制作する時は、まず筆につけた絵の具の匂いを嗅ぐことから始める。その後、筆を使って色を塗るが、しばらくすると絵の具をキャンバスや箱の上に垂らして、感触を確かめるように指や手のひら全体で塗り広げていく。アート活動を楽しみにしており、体調が悪くても参加しようとしたり、絵の具の準備をするのに手間取ると待ちきれないというように手をたたいたりするほどだ。言葉でのコミュニケーションがほとんどできない上條さんだが、色へのこだわりで自分自身を主張しているように感じる。生まれてきたとき名前を与えられたように、コバルトブルーという自分のアイデンティティーを見つけたのではないだろうか。
「無題」 2015 – 2017