佐藤 元子

さとう もとこ

 

1954 年生まれ 飯田市在住

 

 

透明なセロテープが丸められてふわっと積み重ねられている。これは何だろう、なぜそんなことをするんだろうかと、のぞき込みたくなる作品である。
小さなころから施設で暮らしていたが、18 歳になり実家に戻りお母さんと暮らす。お母さんは本人を連れて下伊那の山間地の集落を回り、衣類を販売する行商生活をしていたそうだ。
そのお母さんは8 年前に亡くなり、今は義姉との二人暮らし。セロテープを丸めることは幼少の頃より始めていたが、特に実家でお母さんと二人で暮らすようになってからお母さんが出かける時は一人、セロテープでずっと遊び、寂しさを埋めていた様子。お母さんが亡くなって以降も毎日セロテープを積んでいる。
作者が通う福祉施設では、他にもセロテープや粘着テープにこだわる人がいるが、それは大切な人とつながりたい、つなぎとめておきたい気持ちの表れではないかと考えている。
作者は「温田(ぬくた)の駅前の〇〇食堂でお母さんと食べたうな重はうまかった」とたどたどしく話をしてくれた。きっとお母さんと歩いた行商の日々は大切な思い出であり、幸せな時間だったのだろう。お母さんを想う寂しい気持ちも作品に込められているのかもしれないが、そのセロテープはお母さんとの思い出をあったかく包み込もうとしているかのようでもある。(関)

 

 

「無題」2018